秋桜

毎朝、ベランダに置いた鉢植えのコスモスに水をやる。
雑事を片付けて、散歩に出る。
夕食時まで漫然と過ごし、晩酌の後、床につく。
まるで、爺さんだ。

小学校に上がった頃、共働きの両親は夏休みともなれば、まるで空襲から疎開させるかのように、
ひとつ上の兄ともども、我々を母の実家に預けたものだった。その頃の電車の旅は長かった。

母の実家は農家で、祖父ちゃんの家の前には、野原とも畑ともつかぬ草っぱらが広がっていた。
そこでは、コスモスが砦を守る兵隊のように並んで咲いていて、祖父ちゃんちの犬が飛び跳ねていた。
犬の名前は代々「ポチ」だった。一緒に遊んだ「ポチ」が何代目だったのかは憶えていない。

中学に上がって、コスモスが秋の花であり、種を播く時期によっては12月まで咲いていることを知った。