浄閑寺

「ハヤカー君、今日は浄閑寺に行ってきたさふだね」
「お彼岸ですので、荷風先生の文学碑と筆塚を見にいって来ました」
「貴君、そいつはをかしいぜ。お彼岸なら雑司ヶ谷に行くんぢやないのかい」
「はぁ、さふ思ったんですが、気がついた時には、もう昭和通りに足が進んでゐたんです」
「引き返せないもんかい」
「引き返せませんね」


「先生も、昨日は妙な処へ出掛けた様ぢやないですか」
「なんだい」
ユーロスペースですよ。単館上映なんて滅多に行かないぢやありませんか」
「さう云ふけど、観たのは23年も前のシャシンだぜ」
「なるほど、まだ平成になってゐませんね」
「汝は昭和の児なりや 治虫はかくれ ひばりは堕ちる」
「はぁ」