送られる

 昨年末、友人との忘年会の時に、体調不良で欠席した友人がいた。みんなもう40代だし、何が起こるかわからない。すると、ブラックジョークの好きな友人が、欠席した友人の名前をあげて「〇〇のために」と、映画『ディア・ハンター』のラストシーンを真似て乾杯のしぐさをした。常識的に考えれば、非常に不謹慎なことだが、そんな人間とつきあってる我々は、もちろん、いつものように笑ってすませたのである。
 それが頭にこびりついていたのか、 先週末『ディア・ハンター』のDVDをプレイヤーのトレイに載せた。ラストシーンのデ・ニーロとメリル・ストリープの視線のやりとりが、素晴らしい。そして、友人が真似てみせたあの乾杯のシーン。
 自分が死んだとき、たとえ家族がいなくても、あんなふうに仲間に送られたら幸せだろうなぁと思ったのだ。