僕と鼠

東京紅団とゆうサイトがある。戦前戦後の作家を主として作品の舞台を訪ねるとゆう企画をコンテンツにしている。
そこに、「村上春樹を歩く」とゆうコーナーがあった。
現代の作家を取り上げるのは珍しいことだなと思って、コンテンツを読むと、「1973年のピンボール」のゴルフ場とは、ICUのゴルフ場、つまり現在の野川公園であることを知った。
くわえて以前から、id:taknakayamaさんの、村上春樹に触れてたエントリーを読んでいて、無性に「僕と鼠」シリーズ三部作が読みたくなり、本棚の奥から引っ張り出した。


村上春樹と出会ったのは、高校生の時。中学校以来の親友に勧められたからだった。
思春期に村上春樹に出会った人なら、みな憶えがあると思うけれど、その親友と僕は、お互いを「僕と鼠」の関係になぞらえていた。
彼はフィリー・ソウルが大好きで、僕はビーチ・ボーイズが大好きだった。
ジェイズ・バーみたいな店は無かったけれど、よくお互いのアパートでレコードを聴きながら酒を飲んだ。
彼のアパートは郊外の私鉄の駅から10分くらいの距離、畑の中にポツンと建っていて、当時の学生が借りるアパートとしてはかなり広めだったと思う。双子の女の子が一緒に住んでいてもおかしくない。


それは、ダイアナ妃が来日したり、青山にまだ「パイドパイパーハウス」が存在していた頃の話。
「鼠」がいて、恋人がいて、月曜から土曜には、うんざりするようなアルバイトがある。
世界は非常にシンプルで、我々はこの時間が永遠に続くと思っていた。

昭和が終わった年に、僕は恋人にふられ、訳あって「鼠」とも疎遠になってしまった。
今彼が何をしているのか、僕は知らない。