レジ袋体験

今日の昼過ぎに、雨上がりの通りを歩いていると、上空の白い物体に目が奪われた。風に吹かれて白い風船がフワフワ飛んでいるのだ。薄墨を刷いたような曇り空を背景に、風船が浮き沈みを繰り返している。ヘリウムが入った風船ではないようで、徐々に高度が落ちていく。地上に落ちるまでの十秒程の間、立ち止まって魅入ってしまった。

id:elmikaminoさんが、散歩のときに強風でビニール袋が宙に舞う華麗な動きに目を奪われたと書かれたので、賛同のコメントを書いたのだが。実は、サム・メンデス監督の映画「アメリカン・ビューティー」の中に、まったく同じように、ビニール袋がただ風に吹かれて空中を舞っている場面があるのだ。とても美しい場面だ。
僕の周辺の映画好きの友人達も、皆口を揃えて「あのビニール袋が舞うシーンが素晴らしい」と言った。そのシーンにどんな意味があるか?意味なんてない。ただ美しいだけだ。そこから意味を読み取ろうなんて思わない。
風に吹かれて舞っているビニール袋に目が奪われたといちいち書くのも面倒なので、仮にそれを「レジ袋体験」と命名しよう。
レジ袋に限らず、時に日常のごくありふれた物から、とんでもなく美しい映像体験を得る時がある。
そんな、他人が気にも留めないような、些細な場面に美を見つけ出す感性を「レジ袋感性」と呼ぼう。
僕は「レジ袋体験」に巡り会うと幸福な気持ちになる。そして「レジ袋感性」を持つ映画監督を無条件に愛する。